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摩天楼でフリーフォール エレベーターが落下

ニューヨークにあるエンパイア・ステート・ビル(102階建て 443メートル)で24日午後、女性2人を乗せたエレベーターが突然落下を始めた。
44階から落下したが安全装置が働いて停止したのは4階だった。
なんと40階分(約120メートル)も落下したのである。
幸い2人は首や肩をいためた程度でたいした怪我は無く、エレベーターが停止した後にエレベーター内に設置された電話で係員に助けを求め、緊急脱出口から助け出された。
助け出された2人は、取材人に対し「死ぬかと思った」「バンジージャンプのようだった」と興奮しながら恐怖を語った。
同ビルの関係者によると、事故は、高層建築特有のエレベーターのカゴ(人の乗る箱の部分)の上下の動きによって生じる吊り上げロープの重さのアンバランスを調整するケーブル(コンペンティング・ロープという)が切れたために起きた。
昨年5月に点検された時には異常がなかったという。

引用:平成12年1月25日「読売新聞」


【はるかのコメント】

なんといいますか、ものすごい事故が起こってしまいました。
エレベータのロープが切れて落ちることはまず無いと言われていますが、こんなことで、落ちることがあるんですね。
どういう状態だったのかちょっと解説しましょう。
アンバランス解消ロープまず、何がエレベータの落下の原因だったのか、それは「コンペンセーティング・ロープ」(略して「コンペンロープ」)の切断が原因です。
このコンペンロープとは右図の中で「アンバランス解消ロープ」と表現している通り、エレベータの吊り下げロープの重さのアンバランスを解消するためのものです。
背の高い建物のエレベータには必ずといっていいほど設置されてあるもので、「かご」がいちばん上に行った時といちばん下に行った時では、吊り下げロープの長さが「かご」側と「吊り合いおもり」側で違ってきますから「吊り合いおもり」と「かご」との重量にアンバランスが出来るのを解消するためにかごの下とおもりの下にもロープをぶら下げてつなぎ、アンバランスを解消するようにしているものです。
ロープの重さは1メートル当り約1キログラムで、吊り下げロープの本数が6本とすると、重さのアンバランスは最大2トン近くなります。
このアンバランスを解消するには同じ重さのロープが必要ですから、コンペンロープの重さも最大約2トンになります。
今回の事故は、おそらくこのコンペンロープが吊り合いおもりの側の吊り下げ部分から切れて、コンペンロープの全重量がかご側にぶら下がった状態になったためにかご側が異常に重くなり、結果落下したものと思われます。
また、コンペンロープが切れたのが44階だったことも災いしました(102階建ての44階ですから、かご側にある吊り下げロープの長さがすでにおもり側の吊り下げロープより長くなっていて、重くなっている状態だった)。

さて、では何故エレベータが停止するのに約120メートルも落下したのでしょう。
それは、エレベータが走行中にコンペンロープが切れたのではなく、エレベータが動き出した時に切れたためです。
エレベータは通常の走行速度を越えた速度になると非常ブレーキがかかるようになっています。
ですから、ブレーキが効かずに120メートルも落下したのではなく、ブレーキがかかる速度に達するまでかごが落下してから初めてブレーキがかかるので、120メートルも落下したのです。
このコンペンロープの切断によってかごは大きなおもりをぶら下げる形となりましたが、吊り下げロープの反対側には吊り合いおもりがありますから、完全な自由落下にはならなかったはずで、このことも非常ブレーキがかかる速度に達するまでの距離を長める事になった要因のひとつと考えられます。

いずれにしても、「昨年の5月に点検した時には・・・」って、そんな間隔でしか点検しないなんて、なんともアメリカらしいというか、日本ではちょっと信じられないですね。

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